詳報③ パネルディスカッション
多様な人材と資金の循環による地域コミュニティの自立を目指して
基調講演に続くパネルディスカッションでは、福知山公立大学地域経営学部の杉岡秀紀准教授をコーディネーターに、京丹後市ゆかりの企業経営者など4人のパネリストが登壇し、自らの活動内容を紹介するなどして新たな地域モデルについての意見交換を行いました。


届ける仕事から『つなぐ』仕事へ
株式会社丹後乳販 井上 泰典・代表取締役。創業86年を迎える乳製品宅配事業の企業経営をしながら、今年7月に『WAKUWA健康しあわせステーション』を設立。健康講座やイベントを通じて、地域の活力創出に取り組んでいます。
「私たちは創業以来、地域の暮らしとともに歩んできた会社です。しかし人口減少や高齢化が進む中で、ただモノを届けるだけでなく、地域の健康や幸せをどう支えていくかが自社の使命と感じるようになりました。そんな思いで立ち上げた“WAKUWA”は、地域の高齢者が集いおしゃべりを通じて笑顔になれる居場所を提供し、地域のつながりを健康という形で再生していくことを目指しています」と話す井上さん。まさに関係性の中にこそ、地域を元気にする種があるのではないかと訴えました。

『おもしれぇ』を合言葉に活動
いやさか吉野地域づくり協議会 江草 智子・地域マネージャー。2021年度から京丹後市の新たな地域コミュニティ推進事業で同協議会を立ち上げ、『みんなでつくろう おもしれぇ吉野』を合言葉に地域の人達が楽しめる事業を企画し実践しています。
「“新コミュ”の活動を始めて今年で5年目。楽しい・面白いを丹後の言葉で“おもしれぇ”というのですが、私たちの取り組みはとにかく“おもしれぇこと”を大事に活動しています。地道な活動も何かの役には立っているという前向きなマインドが続ける秘訣です」と話す江草さん。地域住民と協力して、文化祭や田植えイベントなど様々な催しを実施しています。参加者の笑顔を自身のカメラで写真に収めるのも喜び・楽しみの一つとなっているそうです。

『稼げる自治会』を創り地域の自立を促す
株式会社リバイタライズジャパン 三本 大介・代表取締役。2020年に創業した同社では、地域が持つコンテンツを再発見、魅力体験をプロデュース、持続可能な社会の創造、などのミッションを掲げ事業を展開。現在は、野間地域の活性化支援、農作物のブランディングを手掛けています。
「2023年から京丹後市では“地域版ふるさと納税”という制度が創設されました。その活用について野間地域と協働し“稼げる自治会を創る”取り組みを行っています。具体的には地域活性化プロジェクトで約250万円の寄付を獲得。高齢者向けの送迎車を購入したり、地域のPR動画を作成したりと、住民のニーズを整理しながら運用しています」と話す三本さん。まずこういった制度を活用して資金を得て、それを循環させる仕組みを地域の方々に知ってもらいたいと語りました。

はだしで遊べる海を未来へつなぐ
株式会社あしあと 八隅 孝治・代表取締役。地域おこし協力隊の任期終了後、活動の中心であったビーチクリーンの職業化、海ゴミの資源化を目指して起業。現在は『ビーチワーカー』として活動しています。
「今、世界的な環境問題として海ゴミも深刻な状況です。僕は協力隊のころから5年間、年間60回、約2000人の方とビーチクリーンを行ってきました。体を動かして海岸がキレイになるって単純にすごく楽しいんです。この活動を仕事にしたい! と起業しましたが、資金の循環という壁にぶつかっています。現在はスポンサー企業の出資に支えられていますが、今後ビーチクリーンの労力と海ゴミをどうお金に換えていくか、模索しているところです」と話す八隅さん。『楽しい』を職業にして、丹後の海をはじめ、はだしで遊べる海を未来へつなぎたいという熱意が伝わりました。

結びにコーディネーターの杉岡さんは、『自立とは依存先を増やすこと』という小児科医・熊谷晋一郎氏が提唱した言葉を引用し、多くの人が都市にも地方にも関わって「関係自治」を構築していくことが、これからの人口減少社会の地域を支えるポイントになるのではないかと総括。『連携(れんけい)』という言葉もこれからは人と地域をつなぐ『繋』という字に置き換え、『連繋(れんけい)』していくことの重要さを強調しました。