水源の里 水の源
2026.01.19 | #

詳報 第17回全国水源の里シンポジウム〈京都府京丹後市〉

詳報② 基調講演
集落を超えた広域的な地域コミュニティづくりと人口減少社会における活力の創造

基調講演には、元岩手県議会議員で、世界初の食べもの付き情報誌『東北食べる通信』を創刊し、現在は産直アプリなどの運営を手掛ける株式会社雨風太陽の高橋 博之・代表取締役社長が登壇。『集落を超えた広域的な地域コミュニティづくりと人口減少社会における活力の創造』と題して講演を行いました。

農山村の荒廃が招く熊被害

岩手県花巻市出身の高橋さんは冒頭、昨今、熊が人里に入り人が襲われる被害が増えている現状について、様々な要因が絡んでいるが根本的には地域における農山村の荒廃が問題だと提起します。
「里山に皆で手を入れて美しく保っていた頃は、ここから入ってきたら痛い目にあうぞ! という警告アラートが動物の世界に発信されていたけれど、人が減り田畑が荒廃した結果、アラートがあっちの世界に届かなくなりました。だから熊がエサを求めて、市街地まで来てしまっている現状です。対応する人手もないため、自衛隊にも協力を要請する状況になっています。確かに今年は数が非常に増えているので減らすことは必要だと思いますが、根本的には長い目で見た時に熊を全滅させてしまってどうするんだという話です。豊かな森を作ってきたのも熊であり、まさに我々の命の源を守ってるのもまた熊なんです。僕ら人間も自然の一部であるということをすっかり忘れてしまって、人間に都合いいように自然を支配、コントロール、管理してきたことのツケが、今我々に向かってきてるような気がして他なりません」と語りかけ、会場は一気に高橋さんの話に引き込まれます。
「農村の衰退に歯止めをかけるのに都市住民でもできることはあります。関係ないことじゃない。地産地消の農作物を積極的に買って農家を支えることくらいはできるでしょう? AI、スマホ、インターネット、確かになければ不便だけれど、なくても死にはしない。だけど僕らは生き物です。水や空気、そして食べ物は、なければ生きていけません。その水や空気を育んでいるのは地方の山で、その自然に働きかけて作物を育てる生産者がいて初めて、我々は生きてるわけです。テクノロジーを身につけることも大事かも知れないけれど、人間として生きていく上で大切なものをあまりにも粗末にしてませんか、ということに声を上げていかないとこの国の未来はないと思ってます」という投げかけにハッとさせられます。飾らない言葉に込められた熱い想いに、一同深く共感しました。

人「交」密度の向上を

高橋さんは続けて、これから大事になってくる制度が関係人口の往来を可視化する『ふるさと住民登録制度(※1)』であると提言します。
「下流域と上流域をつなげるためのパスポートが『ふるさと住民登録制度』です。これからもっと人は流動的に生きて、都市と地方が人材をシェアして往来する社会を作っていくという意思を、国も示し始めました。これまでの中央集権国家も国力を上げるために意思を持ってつくり上げた社会です。なのでまた、国民がそれを変える意思を持てば、必ず社会を変えることができます。上流と下流を行き来する人たちが増えて、我々の生活の源を皆で一緒に守れる未来が作れると僕は信じています。 なのでもう、人が減ることを恐れなくていいんです。これからの「人口密度」は、“口”じゃなく“交わる”って書いて『人交密度』。人が交わる密度を高め、関係人口(交)の新しい発想を取り入れていけば、まだまだできることは沢山あります。人口減少社会は前向きに考えていいんです」と強く訴えました。

これまでは1人の人が1ヵ所に固定して生きることを前提につくられてきた社会の仕組みや価値観を見直そうという時代が来ているというお話は、関係者に勇気を与える大変素晴らしい講演となりました。

(※1)令和7年6月に閣議決定された『地方創生2.0 基本構想』で創設を表明された制度。『関係人口』に着目し、地域に継続的に関わる方々を地域の担い手確保と活性化を目的として検討が進められている

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