詳報③ パネルディスカッション
それぞれの視線の先に ―皆で考える嬉野の未来―

基調講演に続くパネルディスカッションでは、“「SAGA地域社会発展の担い手」佐賀災害支援プラットホーム”『SPF』共同代表の山田健一郎氏をコーディネーターに、嬉野の地域・産業に関わりの深い5名がパネリストとして登壇。それぞれ異なる立場、経験から、嬉野への思いと未来への展望が語られました。

先代から次世代へ。バトンを繋いでいく

三根孝一緑茶園にて茶農家を営む三根孝之氏。嬉野温泉に訪れた方が、地域の子どもたちが描いたパッケージで嬉野茶を郵送でプレゼントできる取り組み『グリーンレタープロジェクト』を令和元年より開始。また、県内の小学校に出向いて嬉野茶の美味しい淹れ方教室の開催といった活動にも取り組まれています。「お茶の需要減少、後継者不足など茶業界全体が厳しい状況にあると感じています。私は、茶農家として、親として、子ども達が安心して生活できる経営を実践するとともに、嬉野茶づくりを安心して子どもへ継承できるようにと、活動を続けていきます」と語ります。
若者が集う、活気ある町づくりを

塩田津町並み保存会理事長の杉光敬一郎氏。江戸時代から続く宿場町『塩田津』の景観を後世に伝えることを目的に、部会ごとに別れてそれぞれ活動されています。塩田津の町並みや建造物の歴史や文化を観光客に伝えるガイド部会。毎週日曜の朝、野菜や果物、豆腐や海産物を塩田津の古民家の軒下で販売する朝市の会。イベントの開催・周知などを行う、ときノ廊下部会など、それぞれ地域一丸となって塩田津の活性化に取り組んでおられます。「地域住民皆さんの協力はもちろんですが、国・県・市のお力をお借りしながら、少しずつ前進しているところです。若い担い手もずいぶん増えてきました」と塩田津の将来について目を細めます。
被災からの復興。人の繋がりを大切に

嬉野南部釜炒茶業組合の山口孝子氏は、12年前から夫婦二人三脚で釜炒り茶の生産に専念。茶の生産を行いつつ、組合のHP運営やSNS発信などPR業務にも深く関わっておられます。令和3年、嬉野を襲った豪雨災害では自宅や倉庫など大きな被害を受けましたが、被災を乗り越え、令和3年度・5年度の全国茶品評会にて農林水産大臣賞を受賞されました。「避難を余儀なくされるほどの大きな被害を受けましたが、多くのボランティアの皆様の協力で復旧することができました。その後、石川県で大地震が起こったのは皆さんのご記憶にも新しいところ。私たちは物資を持って石川県に向かいました。支援に駆け付け物資をお渡しした際、涙ながらに『ありがとうございます』と話してくれた住民の方を忘れることができません。これらの経験を通じて、人の温かさや繋がりを大事にして嬉野茶をつくっていきたいと思います」と山口氏。最後に嬉野豪雨被害の復旧に関わったすべての方々に改めて感謝の気持ちを伝えられました。
地域資源を総動員して最高のおもてなしを

嬉野にある旅館『吉田屋』の常務取締役兼女将を務められる副島瑠美氏は、女性をターゲットにした戦略や新しい手法を積極的に取り入れ、さらなる旅館業の発展に取り組まれています。『この地にあり続けた旅館を守り、存続させていきたい』との思いから、地域の旅館を継承・存続するプロジェクトもスタートしました。「古い町並み、肥前吉田焼に代表される焼き物、海や川や山々といった豊かな自然環境。さらには嬉野温泉駅の開業と、嬉野は観光地として大変恵まれています。今後も嬉野の魅力を最大限に発信し、地域文化の振興と経済の活性化に向けて、様々な取り組みを続けていきたいと考えています」と話されました。
地域から世界まで、“ティーパワー”で嬉野を盛り上げる

地元茶業の振興に尽力される“茶癒人(ティーラー)ななとも”の永尾智子氏。お茶畑ツアーを主催し海外からも注目を集めるなど、お茶で人を癒す『ななともの茶癒事』を掲げ日々活動されています。佐賀を舞台とした海外ドラマ『From Saga With Love』では、嬉野市の茶畑をロケ地としてアジャスト。茶畑を通じて嬉野の景観の素晴らしさも世界的にアピールする絶好の機会となりました。「お茶はもちろん、お茶畑には癒され元気になるティーパワーがあります。地元の方、県外の方、海外の方、お茶畑にぜひお越しください」嬉野茶はもちろん、茶畑自体も立派な観光資源であるとアピールされました。
コーディネーターの山田氏は、孟子の言葉『天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず(※1)』を引用し、「令和3年の災害は確かに大変なものでした。しかし、そこから復興を遂げた嬉野には、可能性を秘めた地域資源が多くあり、今日ご登壇いただいた皆様のように様々な分野でご活躍されている方たちもいる。これまで各々で活動されていた方々が、今日をきっかけに“和”をなして相乗効果を発揮し、更なる嬉野の発展、活動につながることを期待します」と総括しました。
今回のシンポジウムは災害からの復興をテーマに、人のつながりと交流、地域連携の大切さ、文化や伝統、地域産業をどう紡いでいくかを考える大会となりました。
(※1)好機は地理的有利さに及ばず、地理的有利さは人心の一致にかなわない。事をなすには人の和が第一であるという意。