水源の里 水の源
2025.02.25 | #

詳報 第16回全国水源の里シンポジウム〈佐賀県嬉野市〉

詳報② 基調講演
自然災害と共に歩む-地域のつながりで守る命

基調講演では、災害NGO結(ゆい)代表 前原土武(とむ)氏が登壇し、『自然災害と共に歩む―地域のつながりで守る命』と題した講演が行われました。

一人のスコップ、1000人のスコップ

『自分一人がスコップを動かすより、1000人のスコップを調整する方が復旧・復興に結びつく』との理念を持って活動される前原氏。災害支援コーディネーターとして過去30ヶ所以上の災害支援の中で様々な技術支援団体と連携し、災害ボランティアセンターの運営支援や、長期的な復旧・復興を念頭に置いた総合的な被災地支援の提案など、現在も被災地支援活動に邁進されています。

これまでの13年間にも及ぶ活動経験から、見えてきたこと、感じたことをお話いただきました。

災害NGO結代表 前原土武氏

能登の現状。日本の地域・集落のこれから

「2024年1月1日に発生した能登半島地震では、かねてから人口減少・高齢化が問題視されていた地域・集落が大きな被害を受け、地震災害をきっかけに一気に人口減少が進んでしまいました。亡くなられた方、日々の暮しが困難になってしまった方、生活や仕事の都合上どうしても集落を離れなくてはいけなくなった方々……。地震の影響で集落の維持が困難になった地域がいくつもでてきてしまいました。現在、地方の人口減少・過疎化問題は深刻度を増し、数年後、数十年後には消滅の可能性がある集落も決して珍しくありません。こうした問題を改めて浮き彫りにし、先行して経験しているのが、今回の被災地、能登なのかもしれません」と指摘します。

過疎化が進んだ地域はより人口が減少し、山や河川が脆弱な地域はさらに脆くなってしまうなど、“弱いところ”が“より弱く”なってしまうのが災害だと前原氏。では、いつどこで起こるか分からない災害に、地方地域はどう立ち向かえばよいのでしょうか。

日常に“防災”を

「これまでの災害支援で分かったことです。災害が起きたからと、人は急に特別なことができるようにはなりません。普段料理をしない人に炊き出しは無理ですし、ロープを扱った経験のない人はもちろんロープが結べません。ショベルカーに乗ったことのない人間が、チェーンソーを使ったことがない人間が、急に重機や工具を扱えるようにはなりません」
さらに前原氏は続けます。
「日ごろから助け合いの意識の薄い地域では、災害が起きたからと急に助け合いが生まれるわけがない。であるならば、日々の暮しを大切に、普段から地域の繋がりや互助の考えを持つことが災害への備えになると思っています。周りに困っている人いませんか。お住まいの地域が抱える課題は何でしょう。改めてご自身がお住まいの地域について考えてみてはいかがでしょうか」

自分たちの住む地域では

講演の終盤、前原氏は呼びかけます。
「皆さんがお住まいの地域で、もし災害が起きたとき、どの程度の被災なら自分たちの地域だけで対応できるか。ぜひ想定してみてください」
「ここまでの浸水被害なら地元のみで対応可能だ。では土砂災害が発生した場合はどうか。この規模の災害になると地域だけでは対応しきれないかもしれない。だったら近隣に助けてもらわなければ……等々、事前の想定・心構えはとても大切です。特に人口が減少し高齢化が進んだ地域では、助け合いや互助といっても限界があります。外部との連携、関係の構築、受け入れ体制の整備が必要となってくるでしょう。ということは、平時から“助けて”と発信できる繋がりを築くことも立派な災害への備えとなるのです。災害の規模、災害対応別に具体的にパートナーまでを考え、ガイドラインを設定しておくことも大事かもしれません」

結びにかえて

「皆さんの地域で、いつ何時災害が起きるかもしれません。能登の被災を他人事とせず、考えるきっかけになってほしいと思います。また、これまでの活動から、日本でも災害支援の専門家的なNPOが必要とされる時代に突入したとも感じます。持続可能な地域を皆で作っていくような社会を目指し、これからも一丸となって築いていけたら、と思っております」

突然襲い来る自然災害。普段からどのように対策を講じ、復興への道をどう築くのか。私たち個人単位できること、地域が一丸となって取り組むことは何か。日常からの意識改革はもちろん、隣人との、地域との、外部との連携についてなど、前原氏の講演は、持続可能な地域の発展と復興への道しるべ、未来への指針を示すものとなりました。

2025.02.25 | #