詳報① 開会式典~フォトコンテスト表彰式
命を育む大地を守る
~大雨災害からの復興と未来への第一歩~

嬉野市 ―風光明媚な環境と多彩な観光資源と―
今回の『全国水源の里 シンポジウム』開催の舞台となった嬉野(うれしの)市は、佐賀県西南部に位置し、豊かな自然環境と地域に根差した特産品の数々、歴史を備える宿場町・河港が所在する地です。
全国茶品評会にて最高品質を表す『農林水産大臣賞』を5年連続受賞の経験を持つ“うれしの茶”、日本三大美肌の湯 “嬉野温泉”、そして400年の歴史を持つ陶磁器“肥前吉田焼”、それぞれが全国的に高い知名度を誇ります。また、かつての宿場町の面影を残す町並み“塩田津” は、国選定重要伝統的建造物群保存地区にも指定され、令和4年(2022年) 9月23日には西九州新幹線開業に伴い嬉野温泉駅も整備、観光地としても今後の発展が非常に期待されています。

シンポジウム開催に先立ち披露されたのは、佐賀県に伝承される民俗芸能“面浮立(めんぶりゅう)”。元亀元年(1570年)、豊後の大友親貞が大軍を率いて肥前の国に攻め込んだ際、鍋島平右エ門(後の鍋島直茂公)が一族郎党に鬼の面をかぶせて夜襲をかけ、大友軍を撃破。その戦勝祝いの宴で、鍋島公が兵たちにそのままの姿で躍らせたのが起源とされ、現在では神事として、五穀豊穣、天下泰平、悪魔退散を祈って、県内各地の神社に奉納されています。勇壮で力強い舞姿と笛・太鼓・鉦の音色が会場全体を活気づけ、オープニングを鮮やかに彩りました。

被災から復興まで。―復興の過程で見えてきたもの―
続くシンポジウム実行委員会委員長・村上大祐嬉野市長による開会の挨拶では、嬉野市を襲った令和3年の豪雨災害からの復興までを振り返りながら『大雨災害からの復興と未来への一歩』と題した今回のシンポジウム開催への強い想いを語られました。
「九州北部、ここ嬉野は、令和3年夏の豪雨では大きな被害を受けました。シンポジウム会場周辺も浸水、土砂崩れが同時多発的に250カ所、特産品である茶園・茶畑も甚大な被害がありました。すべての被災現場をこの目で見て、これは長い道のりになるだろうと覚悟いたしました。しかしながら、地域の力と災害ボランティアの支援を受け、全国茶品評会において農林水産大臣賞、産地賞1位を獲得できるまでに復興を遂げることができたのです。復興の過程で見えてきたこと。それは公的支援だけでは限界があること、平時の備えこそ最大の防災だということでした」

ボランティアの方々との関係強化
「大きな災害を受けたとき、多くのボランティアの方が来られます。しかしボランティアの方々それぞれの個性や特性を把握できないままでは、相互理解が深まらず、復興への取り組みにも食い違いが生じてしまいます。そこでボランティアの皆さんと平時より繋がりを深め、いざという時に『助けてください』と発信ができる関係を築く。『誰がどこで困っているからこういう助けをお願いします』と、被害状況を的確に把握し、適切な対応をお願いできる方へメッセージを迅速に発信できる。災害が多発する時代にあっては、とても大切な能力だと思うに至りました。平時からの備え、すなわちボランティアの方との関係の強化は、必ず今後の安心安全に繋がっていくと確信しております」

上流は下流を思い、下流は上流に感謝する
「そしてこれが一番の教訓であり、本シンポジウムのテーマを貫く根幹部分でもありますが、『山は川と繋がっている。山林や農地も川を経由して下流域に甚大な被害をもたらす。ゆえに流域治水、山間部の農地保全が流域全体の生命を守ることに繋がる』と。『上流は下流を思い、下流は上流に感謝する』という水源の里の理念に基づく流域連携の必要性を改めて強く感じました。佐賀県でも『森川海人っプロジェクト(※1)』が立ち上がり、自然の景観を守り、災害に備えてまちづくりを進めていこうという機運が高まりました。まさに、山の暮らし、山の生業を守ることは、すべての市民を守るにつながるということを改めて共有したいと思います」と結ばれました。
(※1)森川海人っプロジェクトとは………
有明海と玄海という2つの海に面する佐賀県。近年では、被害規模の大きな災害が頻発。なかでも平成29年7月の「九州北部豪雨」では、有明海に大量の流木が漂着し県内の漁業施設に大きな被害をもたらした。この出来事をきっかけに九州北部豪雨と同じ年の10月に立ち上がったのが「森川海人っプロジェクト」。佐賀県の森・川・海、そして人とのつながりを見つめ直すことで県民一人一人の環境保全への意識を高めていくことを目標にしている。「森川海はひとつという思いを人が未来へつなぐ」という理念のもと、森川海を体験し学ぶ機会の創出や森川海で活動する個人・団体のネットワークづくりに取り組んでいる。



文化庁事業で伝統の釜炒り茶の展示、実演、ふるまいを実施


文化庁の「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業に認定された「うれしの釜炒り茶文化継承事業」の一環として開催した試飲会。
モデル事業では、このほか、記録動画やパンフレットの作成など「見せ方」を工夫しながら、伝統製法のアピールと後継者育成を目指す取り組みを進めている。